【読書感想文】恋愛ハウツー実践小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』
一部の界隈で話題になっている恋愛理論「恋愛工学」を題材にした小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』を紹介します。賛否両論ある内容だと思いますが、男女それぞれ学びのある本だと感じました。
▼この記事の構成です。
・著者の紹介
・書籍の概要
・書籍の中に登場する恋愛テクニックの紹介
・まとめと感想
『ぼくは愛を証明しようと思う。』の著者:藤沢数希とは
藤沢数希氏は、海外の大学院にて理論物理学を研究し、その後とある外資系投資銀行でトレーディング業務に従事、現在はこれらの経験を活かして作家として独立しています。
また、氏は「恋愛工学」という金融工学を恋愛に応用した理論を提唱しており、今回紹介する『ぼくは愛を証明しようと思う。』は恋愛工学を題材にした小説作品です。
経歴は本当か?実在する人物か?など、数々の憶測を呼んでいる人物だと言えます。
Twitterでもビッグアカウントを運用しているので、興味のある方は読んでみてください。
小説『ぼくは愛を証明しようと思う。』の概要
渡辺正樹、27歳、弁理士。誠実でまじめなことが取り柄だが、恋愛ではいつも失敗ばかり。そんな僕が、ひょんなことから「恋愛工学」のマスターに出会う。そして、真実の愛を探す冒険に旅立った。
「恋愛工学を知れば知るほど、そして、実際にたくさんの女の行動を目の当たりにすればするほど、世間に広まっている恋愛に関する常識は、すべて根本的に間違っていることを確信した。恋愛ドラマやJ-POPの歌詞、それに女の恋愛コラムニストがご親切にも、こうしたら女の子にモテますよ、と僕たちに教えてくれることの反対をするのが大体において正しかった。」
(本文より引用)
一途だった青年の渡辺が、恋愛工学のテクニックを身につけてモテるようになっていくというお話です。
全400ページほどのうち、体感で200ページくらいは渡辺がナンパしてる場面、そんな小説です。さらっと読めます。
「非モテコミット」「フレンドシップ戦略」「スタティスティカル・アービトラージ戦略」など、著者が提唱する恋愛理論が随所に登場します。
著者のシニカルでコミカルな筆致はなかなか面白く、好き嫌いは分かれそうですが結構読ませる文章だなと感じます。
恋愛工学に基づく理論の紹介
以下、本書で登場する恋愛理論の一部を紹介します。
(1)「非モテコミット」
「非モテコミットというのは、お前みたいな欲求不満の男が、ちょっとやさしくしてくれた女を簡単に好きになり、もうこの女しかいないと思いつめて、その女のことばかり考え、その女に好かれようと必死にアプローチすることだ」
(本文より引用)
「非モテコミット」とは、上記のように必死に一人の女性にアプローチすることを意味します。
非モテコミットは、モテない男性がしてしまいがちな愚かな恋愛戦略だと、恋愛工学においては切って捨てられています。「必死さ」はアプローチしている女性に伝わり、余裕のない男、需要のない男だということを自らアピールしているようなもの、というのがその理由です。
「女性は誠実な男性が好き」という話はよく聞かれますが、最初に恋人として選んでもらえるかどうかと一途(=誠実)かどうかは無関係であり、結果的に付き合った男性が誠実だったらそれに越したことはないよねという、後付けのアドオン条件なのかもしれません。
(2)「フレンドシップ戦略」
「フレンドシップ戦略」とは、非モテコミットした女性に対して、「まずは友達から」といって関係をスタートし、親密度を徐々に深め、最終的に告白するなどして彼女にしようという戦略です。
こちらも、恋愛工学においては愚行として一蹴されています。
ときめきメモリアルに代表される好感度システムが全否定された瞬間です。
フレンドシップ戦略によって女性と友達関係になったとしても、「友達フォルダ」に一旦入れられてしまうと、ずっと「いいお友達」として友達から彼氏に昇格することが難しくなってしまうというのがその理由です。
最初から付き合いたいというスタンスを明確にしましょうというお話で、個人的には正しい気がしています。
色恋目当てな気持ちを内に秘めながらそれを隠してフレンドリーに接しつつランクアップの機会を窺うって、ちょっと気持ち悪いと思われてしまうかもしれません。
(3)「スタティスティカル・アービトラージ戦略」
「統計学的なアプローチであるスタティスティカル・アービトラージ戦略の素晴らしいところは、これだけたくさんの女に同時にアプローチすれば、少なくともひとりとうまくいく確率は、かなりあるということだ」
(本文より引用)
スタティスティカル・アービトラージ戦略とは、藤沢氏が提唱するモテの方程式、
・成功回数=試行回数 × ヒットレシオ(成功率)
こちらの式に基づく統計学的アプローチのことです。
要するに、成功率はゼロではないので、試行回数に比例して成功する回数が増えるという考え方です。
数多くの女性と出会い、何度も口説くことを繰り返していれば、いずれは女性と付き合えるというシンプルなものです。
このスタティスティカル・アービトラージの考え方は恋愛工学の根幹を成しており、登場する数多くのテクニックは、①試行回数を増やす、②ヒットレシオを高める、このどちらかに寄与するものとなっています。
まとめと感想
(1)恋愛をゲームとして捉え、女性を攻略対象と見なす内容。鵜呑みにするのには否定的
ややもすると女性を単なる攻略対象として認識する恋愛工学は、賛同する人もいる一方で批判の声も多くあります。
個人的にはモテの方法論として通用する部分が多いとは感じていますが、果たして恋愛工学に基づくアプローチで幸せになれるのかは疑問ですし、また、周囲にマイナスの影響を与えるのではないかとも思っています。
(2)恋愛理論はほぼ既出だけど、知っておくのはいいかも
恋愛工学で登場するテクニックのほとんどは過去に恋愛指南本などで取り上げられているものの焼き直しという感もあります。
それでも、著者のシニカルながらも面白い筆致で焼き直されて拡散され、世間で改めて恋愛テクニックの是非が議論されるのは悪くないことだと思います。
(3)こんな人はこう読もう!
読み手の立場によって読み方が変わる本だと感じました。以下参考にしてください。
①とにかくモテたい男性:モテのテクニックが書かれた参考書
②つらい失恋を経験した男性:恋愛を重く考えなくてもいいんだよ、という精神安定剤
③女性全般:こんな男に注意しよう、という防犯マニュアル
そんなわけで、自分は恋愛工学を盲目的に礼賛し実践することには否定的ですが、「モテる男の手口」として男女問わず恋愛工学を知っておくのはよいことだと考えます。
皆さんはどう思いますか?
また、この記事で書籍に興味を持っていただけたのであれば幸いです。